2008年02月08日

「毒ギョーザ」にみるリスク管理

中国製冷凍餃子に殺虫剤成分が混入していた事件は、さらに新たな成分が発見されたことで、ますます混乱の様相を呈してきている。
特に生協のスーパーに置かれていた商品から出たことが、さらに信用を貶めているという。
もっとも、先に発覚した「ミートホープ」も、生協に納品していたことが判明しており、「生協神話」がすでに過去のものであることを物語っている。

結論から言えば、この問題は「コスト削減」に起因するものであり、低コストは高リスクに直結するものであることを証明しただけのことだった。
つまり、「安かろう悪かろう」である。

当然のことだが、価格を下げるためには、コストを下げる必要がある。
商品のコストは、主に、材料費、加工費、輸送費、利益などから構成され、そのいずれかを削ることで、コストダウンを図る。
材料費や加工費を下げれば、品質や安全性のリスクが高まる。
輸送費を下げれば、確実性や安全性のリスクが高まる。
利益を下げれば、経営のリスクが高まる。
コストとリスクはトレードオフ(どちらか一方のみ)の関係にあり、「低コスト低リスク」ということは基本的にあり得ない(技術革新などは例外的)。

だが、過酷な価格競争の下では、すべてのコストを下げなければ、市場で勝ち抜くことができない。
価格勝負ではなく、安全性を追求した「低リスク」で市場に打って出る戦略も十分有効だが、これは高コストになり、自然価格は上昇する。
つまり、「低コスト高リスク」か「高コスト低リスク」かの選択になる。

輸入食料が高級品だった頃は、国内産の比較的高品質(低リスク)の食料が安定供給されていた。
だが、高度成長に伴う外食産業の隆盛で、国内の食糧需要は上昇の一途を辿る。
自由貿易への国際圧力もあり、食料輸入は解禁されていく。
食料輸入が自由化されるにつれ、価格競争が激しくなり、国内の「中コスト中リスク」商品が駆逐されてしまった。
市場に出回る農産物が増えれば、価格は相対的に下がり、日本の農家は収入を減らしていくことになる。
彼らは、コストかリスクで勝負をかけるしかないが、コストはアメリカや中国と戦っても勝ち目がないため、後者の「高コスト低リスク」で戦うことになる。
しかし、「高コスト」の勝負は、大量生産が難しく、生産量は下がっていく。
日本国内の食料需要は高いものの、その多くは外食産業や大量消費物に由来するものであるため、「低コスト高リスク」が基本となり、輸入に頼らざるを得なくなる。

「毒ギョーザ」の背景には、貧困化の問題がある。
安全性を犠牲にしてでも、食費を切りつめなければならない家庭が、増え続けているということだろう。
「変な臭いがする」と思いつつ、「毒ギョーザ」を食べ続けた犠牲者たちを、「自己責任」で片付けて良いのか、という話だろう。
「食品偽装問題」からこの方、消費者行政の重要性が問われているにもかかわらず、国民生活センターを民営化しようとしていた政府もまた、批判されねばならない。もっとも、これは福田総理の方針で撤回されたが。

また、学校給食の現場でも、中国製が使われている背景には、過剰なコスト削減がある。
これは川崎市の要人から聞いた話だが、
川崎市の学校給食では、中国製の農産物(生鮮食料も加工物も)は使わず、可能な限り安全性を求めるコンセプトだった。
結果、他の自治体よりも高コストになり、給食費は高めになっていた。
そのため、「改革派」市議や市民団体などから、「給食費が高すぎる」「コストを下げろ」などの圧力が行政にかけられていたという。
これは、川崎市が圧力に負けて、給食費を削っていれば、小学校で「毒ギョーザ」が出されていた可能性があったことを示唆している。

米国では、高所得者層にはベジタリアンが多く、毎日「安全」な食料を口にして、ジムに通って健康を維持する一方で、低所得者層はファストフードに通う率が高く、毎日低価格の冷凍食品やレトルトなどですませている。
また、所得が低いほど肥満率が高く、家計に占める医療費の割合が高いという。
この「健康格差」は、現代日本の行き着く先を暗示しているかのようだ。

「毒ギョーザ」問題は日本人に、米国型の「リスク自己負担社会」か、欧州型の「リスク共同管理社会」かの選択を迫っている。
ニックネーム ケン at 01:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 政治、社会
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